交響曲第5番ハ短調はベートーヴェンのとても有名な曲で、いわゆる『運命』です。
『運命』と言われただけで「ジャジャジャジャーン」とメロディーが脳内再生されちゃいますよね。
今回は交響曲第5番ハ短調とベートーヴェンの解説をします!
交響曲第5番ハ短調
交響曲第5番ハ短調はべートーヴェンが作曲した5番目の交響曲です!
- 作者:ベートーヴェン(ドイツ)
- 発表された日:1808年12月22日(オーストリアのアン・デア・ウィーン劇場)
- 作品番号は67でベートーヴェン自身がつけた
- ベートーヴェンが書いた初めての短調の交響曲
- 4つの楽章で構成されている
- 演奏時間は約35分
- 「このように運命は扉を叩く」と答えたとされ『運命』とも呼ばれるように
「ジャジャジャジャーン」は第1楽章の主題です。
その後に続く第2→第3→第4楽章をまとめた全体を交響曲第5番ハ短調と呼びます。
また「ジャジャジャジャーン」について聞かれたベートーヴェンは「このように運命は扉を叩く」と答えたと言われており、ここから『運命』と呼ばれるようになったそうです。そこから「ジャジャジャジャーン」は運命のモチーフ(動機)とも呼ばれています。
ただこれは、弟子のアントン・シントラーがベートーヴェンに尋ねたときの答えで、それをアントン・シントラー自身が広めたもので信憑性は低いということです。(この方は大げさなことを言う方だったみたいです)
ベートーヴェン本人がタイトルを『運命』としたわけではありません。そのため「日本で運命と呼ばれる」のような言い方もされてきましたが、現在では『運命』で十分通じるようになってきているそうです。(もちろん日本語ではないと思いますが)
また、この交響曲第5番ハ短調が発表されたコンサートでは交響曲第6番田園も発表されています。一つの作品では表現しきれない世界観を補うために、2つの曲が同時に発表されることは少なくなかったそうです。
しかし発表は4時間にも及んだこのコンサートの最後に行われ、観客も演奏者も疲れ切っていたそうで、成功とは言えないものだったようです。
似てる気がする?!
交響曲とは
- シンフォニーとも呼ばれる
- 18世紀の中頃に成立したとされる
- オーケストラによって演奏される
- ソナタ形式の楽曲になる
オーケストラとは、バイオリンやトランペット、フルートなどの様々な楽器で構成される楽団です。15〜20種類の楽器が使われ、一つの楽器では出せない様々な音色を響かせることができます。
また、ソナタ形式とは
- 主題や動機(主なメロディーなど)が提示され
- 展開(イメージが変わったり、薄れたり)して
- 再現(もう一度強調)される
- コーダ(終結部)があるものもある
のような曲の形式です。
とても難しいですが、曲の変化にドラマを感じるのがソナタ形式です!
交響曲第5番ハ短調では第1楽章と第4楽章とがソナタ形式になっています。
ちなみにソナタという言葉もありますが、そちらは「楽器による演奏曲」を意味しているので、ソナタ形式とは意味が違ってきますね!
ハ短調とは
ハ短調は楽曲の調子の種類の一つです。
- 「ド」から始まる音階(ドレミファソラシ)
- 「ラ」「シ」「ミ」が半音下がる(♭=フラット)
- 荘厳であるが悲しい印象
「楽聖」ベートベン
後の音楽に革命的な影響を残した聖なる音楽家ということで「楽聖」と呼ばれるそうです。
名前:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
生年月日:1770年12月16日ごろ(〜 1827年3月26日・56歳)
出身:ボン(ドイツ)
職業:作曲家・ピアノの即興演奏
有名な作品:
- 交響曲第5番ハ短調「運命」
- 交響曲第9番
- エリーゼのために
その他:
- 古典派音楽の完成させ、ロマン派の幕開けをした
- 発表した作品は138曲
- 17歳のときモーツァルト(当時31歳)に弟子入りも、母の結核が悪化しボンに帰る
- モーツァルトが35歳で急逝してしまい、作曲家のハイドンに弟子入り
- 25歳の頃、慈善コンサートで自作のピアノ協奏曲を演奏すると一躍有名に
- 28歳(1798年)の頃、耳が聞こえづらいことに気がつく→40歳の頃には全く聞こえなく
- 難聴を隠すために引っ越しを繰り返す(約80回も!)
- 32歳(1802年)、絶望し『ハイリゲンシュタットの遺書』を書く
- 書いている内に「私を生につなぎ止めているのは芸術だ。内なるものを表現し尽くすまでは死ねない。」と絶望を乗り越える
- 交響曲第3番『英雄(エロイカ)』のモデルはナポレオンだった→ナポレオンが共和制(専制ではない政治)を捨てたことに怒り作品は破棄されそうだった
I will seize Fate by the throat. It will not wholly conquer me! Oh, how beautiful it is to live – and live a thousand times over!
私は運命の喉首を締め上げてやるのだ。決して運命に圧倒されないぞ!この人生を千倍も生きたなら、どんなに素敵だろう!
古典派音楽はハイドン、モーツァルト、バッハが活躍した1750年頃〜1820年頃まで(古典派時代)の音楽のことで、バロック音楽の次に来る音楽時代です。
この頃は市民革命と産業革命により、一般の市民が主役になっていく時代です。
これまでの王宮や教会のためではなく、市民が楽しむための音楽が作られるようになりました。
これを古典派音楽と言います。
バロック音楽についてはこちらの記事をどうぞ!
古典主義で重視された理性や合理性ではなく、感情や個人の自由を表現した音楽がロマン派音楽です。
19世紀のヨーロッパで発展しました。
ハイドンに弟子入りしていたときも、ハイドンは多忙なためほとんど何も教えてもらえなかったそうです。
そのため、ある時ハイドンから「ハイドンの教え子」と楽譜に書くように命じられても「私は確かにあなたの生徒だったが、教えられたことは何もない」と拒否したそうです。
はっきり言いますよね!
楽曲の特徴とソナタ形式
「ン(休符)ジャジャジャジャーン」の2節がこの曲の動機(象徴的なメロディー)
動機の前に「ン(休符)」が入っていることが新しく、緊張感を生む
第1楽章
- 形式:ソナタ形式
- 拍子:2/4
- 調:ハ短調
- 速度記号:Allegro con brio(アレグロ・コン・ブリオ「速く、いきいきと」)
- 2つの主題が提示される提示部
第1主題はハ短調の「暗」→第2主題はハ長調の「明」と対照的な主題が提示される
第1主題と第2主題をホルンがつなぎ、バイオリンが第2主題を演奏する
- 主題がさまざまに変化する展開部
主題が展開(変化・発展)して曲を盛り上げる
- 再び主題が提示される再現部
展開によって薄れた主題が再び提示される
オーボエが第1主題と第2主題の間に入り、曲を落ち着かせる場面がある
第2主題の導入がファゴットで演奏される(提示部ではホルン)
第2楽章
- 形式:変奏曲
- 拍子:3/8
- 調:変イ長調
- 速度記号:Andante con moto(アンダンテ・コン・モート「ゆっくり歩くような速さで、動きをつけて」)
チェロの低音から始まり、徐々に盛り上がるのが第2楽章です。
2つの主題が現れ交互に変奏(主題をさまざまに変化させること)されますが、落ち着いた雰囲気を持った楽章です。
第3楽章
- 形式:複合三部形式
- 拍子:3/4
- 調:ハ短調
- 速度記号:Allegro(アレグロ「速く」)
複合三部形式は3つの部分で構成されていて、その中でもいくつかの部分に分かれている形式です。
冒頭はコントラバスの低音からはじまり、続いて力強いホルンの音が「ン(休符)ジャジャジャジャーン」(主題)を響かせます。
主題が少しずつ高い音の弦楽器により演奏されていき、そして静かになっていきます。
この様子が緊張感を作り出し、第4楽章へと移っていきます。
第4楽章
- 形式:ソナタ形式
- 拍子:4/4
- 調:ハ長調
- 速度記号:Allegro(アレグロ「速く」)
トロンボーンとコントラファゴットが低音域に、ピッコロが高音域に加わり、フォルテッシモ(とても強く)で演奏が始まります。
明るいイメージの楽章で、第1楽章の雰囲気はなくなります。
最後はしつこいくらい終わりそうで終わらないエンディングで、やっと終わります。
まだ第4楽章まで聞いたことがない方はぜひ聞いてみてください。印象がガラッと変わりますよ!